会社で経理部や財務会計部に所属すると、会計監査や税務調査が入ることがあります。
どちらも外部の人が会計処理について調査に来るので、上司を始めとして浮足立つ部署も多いでしょう。
しかし慣れている人はともかく、まだ実務経験が浅いと会計監査と税務調査の違いが良く分からない人もいます。
会計監査と税務調査の違いについて知っておきましょう。
会計監査とは
会計監査とは、会社が行っている会計処理が、会計基準に沿って適切に行われているか調査を受けるものです。
決算書の内容が正しいか、正しくないかについて、「会計士」がアドバイスを行います。
決算書の数字から重要な取引を遡り、資料を確認していきます。
担当者に確認をしたり、請求書などを直接参照することもあります。
上場企業など一定の条件にあてはまる会社は、法律により会計監査は必ず受けなければならないことになっています。
何故会計監査を行うのかというと、株主や債権者に対しての責任を果たす為です。
会社が正しく経営されていないと、株主や債権者に対して不利益をもたらす可能性があるからです。
投資されたお金を正しく使い、利益が上がっているのかなどを正しく伝えることが重視されているのです。
会計監査はこの様に、会社が自分たちの身を守る為に行っているものです。
会社として会計監査法人と契約して、監査に関わる費用も会社から支払われているのです。
つまり、会計監査法人は会社からお金を払ってお願いして来て貰っている、会社の味方という立場です。
税務調査とは
税務調査とは、会社が行った税務申告が、税法に沿って適切にされたものかを調査するものです。
企業にしてみれば、なるべく税金は払いたくないものです。
支払う税金を減らす為には利益を少なくする必要があります。
会計処理の際に売り上げを減らしたり、仕入れや費用を多く計上するところが多く、ニュースで取り上げられている大手企業もあります。
税務調査には「強制調査」と「任意調査」があります。
強制調査は「マルサ」と呼ばれ、国税庁が裁判所の令状を取り、強制的に行う調査です。
テレビで良く見かける様に大勢の国税庁の職員が乗り込んでくるもので、企業は拒否できません。
任意調査は、企業の同意の元で行われます。
普通の会社で税務調査が入る場合、まずこちらのケースとなります。
任意調査ではありますが、虚偽の受け答えをするとペナルティを科せられることがあります。
税務調査の対象となるのが過去5年分の取引で、もし問題となる取引が見つかった場合には、7年前まで遡って調べられます。
会計監査や税務調査で調べられ易いポイントは
会計監査の場合、その会社の業種特有の取引をメインに調査するなど、入る前に対象となる勘定を知らせてくれるのが殆どです。
しかし税務調査は実際に調査員が来るまでどの勘定を調べるのか分かりません。
税務調査が入り易い勘定は以下のものがあります。
・売上の計上
支払う税金を減らす為に、売り上げが大きかった年度では、今期分の売上でも翌期分に回すことがあります。
・交際費
交際費は私的に使用されているかをチェックされます。
交際費は企業によっては上限があり、全て経費計上できない場合もあります。
その為に会議費に紛れ込ませることがあるので、一緒に調べられます。
・人件費
人件費は最も企業の経費で最も大きな割合を占めます。
その為に架空人員がいないかまで調べられます。
不正が発見された場合
会計監査と税務調査では、誤りや不正が見つかった時の対応に大きな違いがあります。
会計処理に不正があった場合、会計士から指導が入ります。
そこでもし不正が直らない場合には「監査証明」が貰えないのです。
これに対して税務調査の場合、修正申告を求められ、場合によっては追徴課税があります。
更に悪質な場合、重加算税が与えられ、世間に社名が知られてしまうことになります。
それぞれの視点の違い
・会計監査
会計監査は、前述の通り企業の会計処理が適切に行われているかをチェックするものです。
つまり、現在ある取引をチェックして、勘定の間違いを見つけて正すことを目的としています。
あくまで会社側としての立場で、税務上問題がない様にアドバイスしてくれるのです。
・税務調査
税務調査の場合、とにかく少しでも企業が税金をごまかしていないかをチェックします。
売上が計上されていなかったり、架空の人件費が費用に計上されているなど、実際にない取引を探し出してその分を追徴課税するのが目的となります。
最初から企業は何かしらの不正を行っている、との目線で入って来るのです。
これから会計監査・税務調査を受ける場合
一般的に企業では、会計監査でも税務調査でも、会議室を貸切にして必要な帳簿や伝票はわざわざそこまで運んで調査をさせます。
オフィス内を勝手にウロウロさせることはしません。
基本的に全ては社長や部長を通して行いますので、経理部員が直接話をする機会は少ないのです。
しかし中には担当者が呼ばれることもあります。
初めて会計監査を受ける人は、もしも訊かれたことがあれば素直にかつ丁寧に答え、相手に理解して貰う様にします。
税務調査の場合、余計なことは一切言わず、質問に対しての回答のみします。
このことを覚えておけば、会社や部署に迷惑をかけることはありません。