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「経営者思考を持つ」の意味。「自転車操業の経営者」と「強い会社の経営者」の違いとは?

「経営者思考を持つ」の意味

iStock-532934597巷ではよく「経営者思考を持って仕事に取り組む」というようなことを耳にすることは多いと思います。

それを聞くとどうしても「資金面に関しての商品やサービスを売って利益を確保するという収支」のみにフォーカスしてしまいがちです。

そうすると同じ経営者の思考でも自転車操業の会社を経営者している人の思考に陥ってしまい、本当に強い会社を経営している人とは思考も結果も正反対の物になってしまいます。

では、そこにはどのような違いがあるのでしょうか?

限られた資金だからこそ違いが生じる

iStock-507269810いざ会社を経営していくとなると、誰もが真っ先に考えることは資金の問題だと思います。
会社を経営していくうえで資金はまさに生命線ですので当然ですし、もちろん強い会社の経営者も自転車操業の経営者も同じことを考えます。

しかし実は、その大切な資金をどこかに投資しようとする際に大きな差が生まれてくるのです。

以下に自転車操業の会社の経営者と強い会社の経営者の資金を投資する傾向の違いをピックアップしてみましたので比べてみましょう。

・自転車操業の経営者の傾向
  1. 売上に直結するもの、すぐに資金を回収出来るもの
  2. 他社(他者)の成功事例の模倣
  3. 利益を還元したり再投資したりはしない(もしくは少額)
・強い会社の経営者の傾向
  1. 利益額に囚われず顧客に喜ばれること
  2. 他社(他者)の成功事例を自社に取り入れる
  3. 投資額の大小を問わず、世間や周囲の方から良いと思われること

いかがでしょうか?
おそらくどちらの思考の経営者も上記1~3の優先順位で投資していくのではないでしょうか。

これだけ見ても結果は大きく差が出てくるということは予想出来ますが、それぞれの項目においてもう少し深く掘り下げてみましょう。

1.利益を増やすという結論を導く思考の違い

Businessman looking at a line between a to b painted on a wall経営者として会社の売上利益を追求していくということは当然の考えです。
どちらの経営者思考でも利益を上げるために自社の商品やサービスに大切な資金を投資していくこととなるのですが、ここで生じている違いは、「すぐに資金を回収出来るもの」なのか「利益額に囚われない」なのか、です。

自転車操業の経営者思考の場合

投資をすると資金が額面的に減ってしまったという事実を突きつけられ、”このまま売れなければ倒産してしまうのではないか”という恐怖にからる。
 ↓
少しでも早く資金を回収したいという思考に到達し、商品やサービスを売るということにのみ注力し、せっかく買っていただいたお客様へのアフターケアなどはすぐに利益が生まれにくいことからないがしろにされる。
 ↓
購入客はその対応に満足出来なかったり不満が残ったりしてリピートに繋がらない。
 ↓
継続購入してくれる顧客が思うように獲得出来ていないので、いつも利益を上げることに追われる売切り型のセールスモデルと同じようになってしまう。

といった悪循環に陥ってしまいます。

そのような経営モデルの中で物価上昇などの影響で仕入れ額が増えた場合、商品やサービスにその負荷を転嫁してしまえば、せっかく獲得した顧客も離れてしまうだけでなく値上げにより新規の顧客獲得は、これまで以上の時間と労力が必要となるため、思うように利益を上げることが出来なくなり本当に倒産してしまいます。

また、新たに競合他社が自社と同様の商品やサービスを、より安価で始めた場合も同様で、お客様は同等の商品やサービスの質であれば、より安いほうを購入するでしょう。
すると結果は同じで、売上や利益が減ってしまうにも関わらず、上記と同様に時間と労力に負荷がかかり、やがて耐えきれなくなって倒産してしまいます。

強い会社の経営者の場合は「利益額に囚われず顧客に喜ばれること」に投資するので、自社商品やサービスを購入した方へのアフターケアもしっかりと行います。
なぜなら、それが顧客に最も喜ばれることの一つだと知っているからです。
そうすることで顧客との信頼関係が築かれ、継続購入だけでなく他の商品の購入やサービスのアップグレードなどにも繋がっていきます。
そして、その都度アフターケアを行うという流れができ、その繰り返しの中で信頼関係が強くなればなるほど多少の値上げや競合他社の登場にもビクともしない強固な関係が生まれるだけでなく、他のお客様を紹介してくれたりと新規顧客の獲得にも繋がっていき、利益も右肩上がりで増え続けるようになります。

2.模倣することと真似ることの違い

iStock-476733674成功するためには「他社(者)の成功事例を真似る」といったことは誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。
もちろん、そのことに疑いの余地はなく、最短で成功するための最良かつ最善の方法の一つです。
しかしながら同じことをしたからと言って誰もが同じ結果になるということは当然ありません。
それは真似をするという言葉を模倣すると捉えてしまうことが原因で、それもまた自転車操業の経営者が陥りがちな思考です。

自転車操業の経営者思考の場合、

他社(者)の成功事例の模倣をしようと考える。

同じような商品やサービスを提供する。

その成功した他社(者)とは立地や顧客環境などの市場ニーズと異なるため売れない。

資金の投資が無駄に終わり撤退を余儀なくされる。(最悪の場合、倒産する。)

という、成功事例をそのまま模倣したにも関わらず悪い結果になってしまいます。

これは売れる商品やサービスということにのみ注目してしまい、マーケット分析や市場ニーズを無視してしまったことが原因です。
では、なぜ無視してしまうのでしょうか。

答えは簡単で、マーケット分析や市場のニーズを読むといった行為は間接的に極めて重要な項目なのですが、直接的に売上や利益を上げるための行為ではないからです。いくら優れたマーケット分析を行っても、そこには”売るための行動”がないので、自転車操業の経営者は1のアフターケアと同様に利益を上げないことと判断しないがしろにします。

強い会社の経営者の場合は、その成功事例をそのまま模倣するのではなく「自社が置かれている環境や市場のニーズにうまく置き換えて当てはめること」から始めます。
そして取り入れられる部分は積極的に真似をして取り入れ、自社の商品やサービスに昇華させていきます。
また場合によっては真似をすることで同様の新しい商品やサービスを始めることもありますが、それもまた、しっかりとマーケティング分析を反映させたうえ市場のニーズにも応える独自のものになっているでしょう。
結果は当然のことながら市場のニーズ=”欲しいという欲求”に応えているので、売上も利益も上がっていくでしょう。

3.直接的な利益以外にも目が向けられているか

iStock-628616360ありとあらゆる面から自社の置かれている立場や、期待されていることを確認し「現状を認識出来ているか」ということは会社を経営していくうえで極めて重要なスキルです。
それは経営者自身が判断するものではなく、お客様や競合他社や協力会社、あるいは自社で働いている社員などによって決められるからです。
それをしっかりと汲み取り、必要な箇所には期待に応じて投資を行っていくことで会社はより強いものへと成長していきます。

これは例えば寄付や従業員の賃金アップ、セールス部門以外の雇用の創出・拡大などを指すのですが、しかしこの場合の投資は利益に直結するものではなく間接的な投資に近いものなので、自転車操業の経営者の場合は投資ではなく支出と判断してしまいがちです。

自転車操業の経営者思考の場合、

自社の商品やサービスの提供により利益を得る。

投資と支出の区別が曖昧なので、利益の還元や再投資には消極的。

利益の一部を社員に給与として還元したり、寄付や新たに雇用を創出するなどして社会に貢献している競合他社があれば、イメージの面で劣ってしまう。

競合他社への顧客離れだけでなく、優秀な人財の流出にも繋がる。

売上が下がるだけでなく、流出してしまった分の新たな人財を確保しなければならないので、投資をする以上の支出が必要になってしまう。

と、これもまた悪循環に陥っています。

会社の資産に対してお金をかけることは誰もが投資と判断することが出来るでしょう。
では、その資産とはお金以外には何があるのでしょうか。

自転車操業の経営者の場合は「お金に置き換えられるもの=売却益を上げることが可能なもの」という認識を持っています。
在庫品や会社の株、土地や建物などがそれにあたります。
なのでそれ以外にかける費用は支出であると考えるので、極力抑えようと考えるのです。
そうなると寄付や人財にお金をかけるということにも消極的になるので、周囲のニーズともギャップが生じてしまい、お客様も従業員もより良いものを求め去っていきます。

強い会社の経営者「会社の資産=会社に係るすべてのもの」と捉えます。
なので、会社で働くすべての人が資産なのでそこに対する利益の還元も投資とみなします。
社員にとって良いこととは賃金や報酬のアップだけでなく、福利厚生の充実や人財の拡充による業務負担の軽減もそれに含まれるでしょう。
また寄付をすることで自社のイメージを向上させることに繋がるのであれば、お客様や協力会社に対して好印象を与えられるだけでなく、競合他社に対しても優位な立場を築けるかもしれません。
これらはすべて、すぐには売上に反映されにくいかもしれませんが長期的に見れば会社には良い人財が集まりやすいうえ、市場的にも顧客に恵まれるというポジションになることが可能で、結果的に利益も増え続けることになります。

強い会社の経営者思考とは

iStock-486997921ここまで2種類の経営者思考の違いを見てきたのですが、このどちらも純然たる経営者思考であることに違いありません。そして世間で求められている経営者思考とはもちろん強い会社のものであることも疑いの余地はないでしょう。1~3の比較を通して見えてくる違いはいくつかあるのですが、大きくまとめると

・自転車操業の会社の経営者

利益至上主義で、物事を短期的にしか捉えられず視野も狭い。

・強い会社の経営者

顧客至上主義で、物事を長期的に捉えることができ周囲からの要求にも敏感。

となります。

強い会社の経営者は”お客様”を大切にし”長期的な関係”を築くことが有益であることを知っています。そして市場の変化にもいち早く気付き、そのニーズに合わせ自社や自分自身を変化させプロデュースしていくことで、様々な要求にも応えていきます。

売上や利益を追及することはもちろん大切なことですが、その先にあるものがどちらの思考に近いのかが大切です。

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