①臨床心理士への道
臨床心理士になるには、まず大学で心理学部を出た後、指定された心理学の大学院に進み、修了後に臨床心理士の受験資格を得て、臨床心理士試験を受けるというのが一般的だと思います。
試験は年に1回あり、一次試験が筆記、二次試験が面接、どちらも東京で行われています。合格率は年度にもよりますが、大体6,7割といった所です。
私は学部で学んだ知識をさらに深めたいと思い大学院へと進みましたが、学部と院では授業内容の深みが全く違うということに最初は大きく戸惑いました。
学部時代は心理学全般について広く学ぶ・知識を得るという机上で済む感じだったのに対し、院ではそれをもとに自分が興味のある分野や物事などについてさらに深く掘り下げて研究していく、そして実際に医療機関や養護施設などに心理の実習生として出かけていくという体験型も増えてきます。
実習先での評価が良いと、そのままそこに就職できるなんていうチャンスも実際に多々ありますので、学生だからといって気を抜けませんでした。
②就職先とお金
就職先としては一番多いのはやはり病院やクリニックなどの医療機関ですが、その他にも養護施設職員や県職員、スクールカウンセラーなど様々な分野にわたります。
ただ、どちらかと言えば正社員よりは非常勤の求人の方が多い印象で、お給料的に厳しい人は非常勤をいくつも掛け持ちしてやり繰りしているとも聞きます。
上手くいけば掛け持ちの非常勤の方が正社員よりも稼ぎが良いということも実際起こります。
③具体的な仕事内容
私の場合、精神科病院で臨床心理士として働いていますが、大きく仕事を分けると大体
【1】心理検査やカウンセリングの実施
【2】デイケアでの企画・運営
の2つです。どちらも一長一短があるといった感じです。
【1】では医師から心理検査実施の指示を受ければ、入院患者さんや外来患者さんに対し、心理検査やカウンセリングを実施します。心理検査の組み合わせは基本的に心理士が自由に組んでもいい所が多いとは思います。
医師からの注文に沿った的確なテストバッテリーを組めるか、要点を掴んだ分かりやすい所見(心理検査の結果報告書です)を短時間で書けるか、そもそも検査自体をスムーズに取れるのか、といった悩み所は多いですが、患者さんの悩みに直に深く寄り添えたり、カウンセリングで徐々に患者さんに笑顔が戻ってきた時などはやりがいを感じますし、深く考えさせられます。
【2】では看護師や作業療法士など、他の職種の人たちと協力・連携しながらデイケアの企画・運営をしていきます。
心理検査やカウンセリングが心理士一人の個人プレーだったのに対し、デイケアでは他職種の人たちと一緒になって仕事を進めていかなければいけないというのが大きな違いです。
職種によって物事の見方・考え方が違うので気苦労がある場合もありますが、その分知識が増えて勉強になり視野が広がります。
デイケアはイベントやゲームなどの実施で開放的・楽しい雰囲気である分、患者さんとスタッフとの距離が近くなりすぎないように注意が必要かもしれません。
あまりなあなあな関係が進んでいくと友達感覚のようになり、せっかく出来ていた信頼関係が崩れる恐れもあります。
④アドバイス・メッセージ
人の心を理解するというのは難しいことです。色んな人がいれば、色んな考え方があります。
心の専門家である臨床心理士は1日、1ヵ月、1年などで習得できる仕事ではなく、生涯をかけて学んでいかなければいけない仕事です。
しかし、必ず求められている仕事です。
本当に困っている人たちが最後に駆け込めるような砦として、私達は常に縁の下から見守り、支えているのです。