電話が苦手だった私が、電話が取れるようになった体験談
私が新卒で入った会社は、電話はほとんど鳴らず取る機会がなかったので、電話を取るスキルが身につきませんでした。
たまに電話が鳴っても、怖くて取れないでいるうちに誰かが取ってしまうので、全然自分で取ることができませんでした。電話自体があまり鳴らないので、取らないことで咎める人もいませんでした。だから電話を取れないまま、恥ずかしながら30歳を迎えてしまいました。
30歳の時、転職活動をし新しい会社に入りました。貿易事務職として入社しました。そこは、とても電話の多い会社でした。5分に一度は電話が鳴っていて、最初はカスタマーサービスの人が取るのですが、取りきれないと事務職の私の方までまわってきます。
最初の3日は何も言われませんでしたが、だんだん上司に取らせるのが心苦しくなりました。
4日目にベテランの方から「そろそろ電話取った方がいいね」と言われ、無理やり受話器を渡されました。それからはどうにか電話を取れるようになりました。しかし応対は下手です。全然上手くしゃべれません。自分の名前どころか、社名を間違えたり、保留にしようとして切ってしまったりしました。でも、周囲の方は全然怒らず、むしろ良く電話を取ってくれると褒めてくださいました。失敗しても良いと思った時、自然に肩の力が抜けました。
きっかけはほんの少しの勇気です。一度取ってしまうと、二度目からは一度目より楽に取れました。
取った電話の内容は、簡単な取次や問い合わせだけではなく、クレームも多く含まれていました。今考えると、ベテランのようにスラスラしゃべるより、たどたどしい私の方が真剣さは伝わったのではないかと思います。自分が電話が下手だからと、卑下することはありません。下手だと自覚した上で、一生懸命しゃべれば良いのです。電話は内容が伝えることが一番なので、口の上手い下手は関係ありません。大事なのは一生懸命しゃべろうとする心です。
毎年春になると、電話口には新人が出る機会が多くなります。自分が慣れてくると、そんな新人が微笑ましく思えてきました。下手でも一生懸命しゃべろうとしているのは、電話越しでも伝わります。そして心の中でエールを送りたくなります。数か月後にその人が淀みなく電話できるようになると、他人事ながら少しだけ嬉しくなります。
慣れている人でも電話口で失敗することもあります。敬語が上手く使えなくて妙な言葉遣いになったり、焦るあまり早口になったり、忙しくてぶっきらぼうに出てしまったりします。完璧に電話ができる人なんてほとんどいません。そもそも電話に完璧を求める方が間違っています。大切なのは気持ちや用件を伝える努力です。
それから開き直ることも大事です。自分が思っているほど、人は自分のことを見ていません。皆、自分のことを第一に精いっぱい生きています。
電話について注意してくれる人がいたら、その人はあなたのことを大事に考えてくれる人です。注意するのは気も使うし、時間も使います。だから注意しない方が楽なのです。注意するのはあなたに良くなって欲しいと思っているからです。