人生にはあらゆる問題がつきまとうものです。
それは小学生の頃から皆に与えられる国語の問題、算数の問題、そして理科の問題などに始まります。
そしてその答を学び、その積み重ねによって知識を増やしながら中高生や大学生へと進学し、やがて社会人となっていきます。
ところが社会人としての人生が始まると、こうした学問的な問題とは違った問題に直面することがあり、学校で学んだ知識だけでは答えを導き出せないことが多々あります。
また、答どころか問題そのものを認識できないケースさえもあるものです。
これは学校生活で何度も経験してきた「与えられた問題」への回答のみならず、或る現実の事象から「起こり得る問題」を想定し、それへの対応を答えとして導き出すことも社会生活では必要になるからでしょう。
問題意識を持つことで視えてくる潜在的な問題
与えられた問題は「顕在化した問題」としてその対応を考えることが問題解決のスタートになりますが、或る現実の事象から想定される問題への先手の対応には「潜在的な問題」としてそれを認識するところから始めなければなりません。
その為に必要な意識を「問題意識」と言いますが、社会生活、特に仕事をする上では日頃からその意識を持っていないと潜在的な問題を見逃してしまうことになります。
顕在化した問題であってもその対応には難しい場合があるのですから、潜在化した問題そのものを見逃しては先手の対応などは出来るはずがありません。
このことをごく簡単な例で言うとすれば以下のようになります。
“顕在化した問題”への対応”
・明日の午前中に上司の承認を得てから午後には提案書を届けるとお客様に約束している。
・提案書は90%程完成したので残りは明日の午前中にしようと帰宅した。(現実の事象)
・翌日上司が風邪で休んでしまったためにお客様との約束が守れない。(顕在化した問題)
・そこでお客様に電話して提案書のお届けを一日延ばして頂いた。(問題への対応)
“潜在的な問題への先手の対応”
・明日の午前中に上司の承認を得てから午後には提案書を届けるとお客様に約束している。
・ところがその日の午後、上司は風邪ぎみとのことで咳が激しい。(現実の事象⇒問題意識)
・明日上司は風邪で休み、お客様との約束が守れないかも知れない。(潜在的な問題)
・そこで至急提案書を仕上げて今日中に承認を得ておくことにした。(問題への先手の対応)
問題の本質を理解することの大切さ
顕在化した問題であれ、潜在的な問題であれ、その問題の本質を正しく理解することが対応する上でとても大切なことです。
前述の例では「上司が休むこと」ではなく「お客様との約束が守れないこと」が問題の本質であることは言うまでもありません。
ところが実際には「上司が休むこと」を問題とし、お客様に対して「問題が発生したために・・・」などと言い訳をする人がいることも事実なのです。
例えその日上司が急病で休んでも、お客様との約束が数日後であれば全く問題はなかった訳ですから、それ自体を問題と考えるのは本質をとらえているとは言えません。
問題への対応には対策が必要ですが、上司が風邪で休まないようにする対策を考えることではなく、例え風邪で休んだとしてもお客様に迷惑がかからないように手を打つことが問題の本質への対応なのです。
問題への対応のステップ
問題への対応には次のような標準的なステップがあります。
①現実の事象を問題意識を持って観察する
②その事象から顕在化した問題や潜在的な問題の本質を見極める
③その問題の原因を洗い出し、自責の原因に対しての短期的・中長期的対応策を考える
④そしてその短期的対応策を即実行し、中長期的対応策で今後の再発防止を図る
ここでこのステップを前述の例に当てはめると、「お客様との約束が守れないこと」がステップ②の問題の本質ですので、ステップ③ではその原因と短期的・中長期的な対応策を考えることになります。
そこで「上司が風邪で休んだこと」が原因と言いたいところですが、それは自責の原因とは言えませんので、その対応策として「どうしたら風邪をひかないようにするか?」などは上司自身が考えることです。
従ってここでは「お客様との約束の当日に上司の承認を得る予定としたこと」或は「上司の承認を得ようとする当日にお客様に届ける約束をしたこと」即ち「自分が、万が一を考えたスケジューリングをしていなかったこと」が自責の原因と考えるべきでしょう。
その原因認識の下に「お客様に電話して提案書のお届けを一日延ばして頂くこと」或は「至急提案書を仕上げて今日中に承認を得ておくこと」などを短期的な対策とし、中長期的には「お客様との約束日よりもX日以上前に上司の承認を得られるように仕上げること」にすると良いでしょう。
以上、社会生活、特に仕事をする上では常に問題意識を持って現実の事象を観察し、その結果として認識できた問題の本質を見極めてから自責の原因を探り、それに対する適切な対応策を講じることが大事になりますので、是非その為の能力を高める努力をして頂きたいと思います。