社会人になりたての頃は、毎日が不安だらけです。「憧れの職業に就いたはいいけれど、理想と現実のギャップを思い知らされた。」「覚えることが山積みで途方もない気持ちになった。」「学生の時にたくさん勉強してきたはずなのに、それが全く活かされない。」「同期のあいつの方が、評価されているような気がする。」などと考えてしまうこともあるかもしれません。
でも、安心してください。これはどの先輩も経験してきたことです。つまずいたことのない新入社員の、3年以内の離職率はとても高く、その後の転職回数も多いというデータもあります。自分を省みることなく次の世界に飛び込もうとするので、いつまで地に足がつかなくなってしまうのです。
しっかり悩んで、足踏みすることはとても大切なことです。そんな新入社員の皆さんに仕事ができる憧れの先輩がやってきた3つの「K」について、お話したいと思います。
3つのK その①「観察」
とある教育番組の歌のおねえさんが、子どもから「どうしたら歌がうまくなりますか?」と質問されたことがあったそうです。そしてその答えは、「たくさん、歌を聴いてください」というものでした。
また、昔から職人の世界では「見て覚える」という教わり方が一般的です。仕事ができるようになるには、仕事ができる先輩のやり方を、じっくり観察することが近道なのです。
もしも仕事を効率よく進めることができずに悩んでいたら、仕事が早い先輩がどのような段取りで仕事を進めているのかをよく見てみましょう。どんなに細かいことでもいいです。
たとえば「デジタルではなく、秒針タイプの腕時計を使っていた!」などでもいいのです。「もしかしたら、秒針タイプの時計を見ながら仕事を進めることによって、感覚的に仕事の配分を逆算して組み立てているのかも?」などと、自分との違いが何か1つでも発見できたら、すぐに真似してみたらよいのです。
「学ぶ」とは「真似る」こと。これも職人の世界では昔から言われてきたことです。
3つのK その②「記録」
いわゆる「メモる」という行動です。ここでの注意点は、なんでもかんでも片っ端から記録にとればいいというわけではないことです。
学生時代の板書は、黒板の字をそのままノートに写せば良かったです。後でゆっくり家で要点をまとめて覚えれば、テスト対策になりました。
しかし、社会人での記録は、その場その場で要点だけを記録する力が問われます。これは常に頭を整理しておかないとできません。つまり、教わる姿勢を「受け身」なものから「能動的」なものに変える訓練でもあります。
先輩は教えながら、後輩のメモの取り方を見ているものです。記録の取り方のタイミングや内容から、その人の仕事の把握状況がわかるからです。
伝えたことを顔も上げずにずっと書いていれば「あれ?前に言ったことと重複しているけれど、覚えていなかったのかな?」と思いますし、要所要所で書いていれば「ポイントをおさえているな。よし次の段階に進んで教えよう。」という判断ができます。
3つのK その③「傾聴」
社会人にはコミュニケーション力が重要と言われていますが、その前提としてまず必要なのが「聴く力」です。漢字に注目してください。「聞く」と「聴く」は違います。
相手の言うことにしっかり耳を傾けて、心を込めてきくことが傾聴です。たっぷり吸収しようという意志が必要です。大好きな曲をきいている時のことを想像してください。歌詞の一字一句を逃がすまいと、心を歌に預けていませんか?それがまさしく「聴いている」ということなのです。
尊敬する先輩からの言葉を、しっかり傾聴してください。その中から自分のものにできることをつかみましょう。
もう1つ傾聴には必要なスキルがあります。それは「質問をする力」です。
しっかりと聴くことができていれば、当然分からないことも出てきます。そのようなときは、その場でどんどん質問しましょう。もしかしたら、「自分だけ分からないのかもしれないから、恥ずかしい。」「前にも教わったことだから、聞きづらい。」とつい躊躇してしまうかもしれませんが、質問して怒り出す先輩はそうそういません。ちゃんと聴いてくれている証を感じ、むしろ嬉しくなるものです。
最後に1番大切な「K」の話
ここまでに挙げてきた3つの「K」は、どの職業にも通用する共通のスキルです。この3つのことを、常に意識して行うと実はとってもヘトヘトになります。でも、それはとても心地よい疲労感です。3Kを通して、たくさんの気づきや達成感を得られ、「仕事してるぞ!」という気分に満たされるからです。
そして、最後にとても大切なとっておきの「K」があります。
それは仕事をしている時に、「ちゃんと自分の「心」があるか?」ということです。
心を込めない仕事には、周りの人への配慮も、発展も何も生まれません。何より、楽しいと思えない気持ちが、自分を1番苦しめます。「好きを仕事に」もいいですが、ぜひみなさんには「仕事を好きに」なってもらいたいものです。