まだ会社で営業をした事のない人や、新入社員などは、優秀な営業マンとは、弁舌さわやかで、常に自分の会社の為に働き成果を挙げている人というイメージを持つことと思います。
私の40年に渡る銀行員生活の経験から、世の中は、必ずしもそうでないと言えます。
反って上記と逆の人が実績を挙げている場合もあります。
即ち、口が重く言葉少ない人が取引先に好かれたり、自分の会社の利益より取引先の利益を考える人が成果を挙げたりすることが多々あります。
今回は逆説的な営業マンの資質を挙げ、それが結局、自分の為になり、取引先、ひいては自分の会社の為にもなることを述べたいと思います。
持って生まれた自分の個性を殺すな。
会社の規模が大きくなるほど、色々な個性を持った社員がいます。
かつての私の同僚に見るからに口が重く言葉少ない人が営業担当として働いていました。
同僚としての普段の付き合いでも、口が重く時には何を言わんとしているのか分からない時もある位でした。
しかし、社員にも色々な人がいるように、取引先にも色々な人がいるものです。
彼が取引先から好感を持たれていることを始めて知ったのは、臨時に彼の変わりに彼の取引先を訪ねた時のことです。
その取引先と仕事の話を進めているうちに、彼の話題になり、その取引先は彼のそんな個性を評価していることが伝わってきました。
無駄な事を言わす、ただ誠実にやるべき事をやってくれればいいということでした。
彼は確かに口数は少ないがやるべき事は黙々とやるタイプでしたが、反ってそれが取引先から好感を得ていることが分かりました。
ビジネスの世界は忙しいのです、だから文字通りビジネスなのです。
取引先から信頼を得る為には、何も自分の個性を殺す必要はありません。
自分の内面は自然に外に出るものなのです。営業はまず、自分の個性を愛することから始まるのです。
時には自社の為でなく取引先の為に働け
会社と言えば、利益第一主義の自分の儲けばかり考えているように思われがちです。
しかし優秀な営業マンは時には自社の利益の為でなく取引先の利益の為に働くこともあります。
私の前職は銀行マンですが、昔、一時期パチンコ業には融資禁止という時代がありました。
パチンコ業は御存知のように絶えず機種変更を行う為、その資金需要が旺盛でした。
私が担当者の時、苦肉の策として取引先から預かっている担保の空きをはずしてやり他の金融機関から資金調達させるという事をやりました。
これなどは、何もしないでいても済むものを敢えて取引先の利益を考えてとった行動と言えます。
これによりその取引先からは非常に感謝されました。
逆説的なようですが、自社の為でなく取引先の為に働くという発想はビジネスの本質を突いています。
言うまでもなく、ギブアンドテイクの精神なのですから。
目先の自社の利益だけでなく、長い目で見た取引先との関係を考えると、時には、取引先の利益の為に働く発想が必要なのです。
左遷はチャンスと心得よ
また、自分の経験で恐縮ですが、長い銀行員生活の中で私は関東最北の支店に融資係として勤務したことがあります。これは別に左遷でも何でも無いのですが、当時は都心の母店や本部に勤務することがエリートコースと見られ、確かに役員になるような人はそのようなコースを歩いていました。
当時は随分田舎へ来たものだと思いましたが、規模が小さいだけに取引先が企業から個人まで担当することになり、仕事で大きい支店にいるよりも幅広い経験をさせてもらいました。6年という長期間勤務したせいもあり、一番思い出の多い支店になりました。
長い会社員生活では思わぬ失敗により、予期せに部署へ配属されることがあるものです。
その時、どう考えるか。どんな部署でも会社の一部であることには変わりなく、かえって順調なコースを歩むよりいろいろ学ぶことが多いということに気付くべきです。
私の場合はその後都心の本店勤務となり、天地が変わるような環境変化に驚いたものです。
しかしどこに居ても仕事は共通するものでした。
左遷は決してマイナスではありません、自分を見直し会社全体を、ひいては世の中を見直すチャンスなのです。
営業の基本はいつでもどこでも変わらず
一応、3点に絞り営業マンとして気付くことを述べましたが、営業とは結局会社と社会の接点にあり、最も会社の方針が現れ、社会の動きも最も敏感に伝わる所です。それだけに仕事のやりがいもあり、刺激的な経験もする所です。
とにかく、営業は人間と人間のぶつかり合うところ、自分の個性のごまかしなど効かず、時には広い視野で物事を見る必要があり、気に入らない部署でもいろいろな経験が出来る修練の場なのです。皆様の今後に多少でも役立てば幸いです。