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取引先や職場内での人間関係でお悩みの方へ。苦手な人を避けてはいけない理由

誰しも仕事をしていれば苦手と感じる人のひとりやふたり、思い浮かぶ方が居るのではないでしょうか。

20代後半で苦手な方に遭遇した私は、後にこの出会いを幸運だったと思うようになり、『苦手な客ほど避けない』は私の仕事上の信条のひとつとなったのです。

人生初、苦手な客との遭遇

businessman in modern office room hand stop gesture新卒で就職してから3~4年の間、これといって苦手な顧客に出会うことなく、むしろ多くの顧客に可愛がられて育った私は、自らを優秀な若手と自負していました。
ところがある顧客を任されるようになって、この自負は地に堕ちることとなったのです。

顧客側の窓口の松本様(仮名)は50代の男性で一見して気難しそうに見える風貌の方でした。何度か打ち合わせを重ねても、あまり私とは目を合わせず、そのくせたまに口を開けば重箱の隅を突くような嫌味ばかりを言うのでした。私は次第に松本様に対して苦手意識を持つようになりました。

ある日、松本様から私宛に電話がありました。要件は「お前のところの新製品をすぐに説明しに来てくれ」とのご依頼でした。苦手な方とは言え、先方からのご要望で、しかも新たなビジネス・チャンスと思えば決して悪い気はしません。急ぎのご要望でしたので、取り急ぎ会社が用意していた新製品の資料をもって私一人で松本様を訪問することとしたのです。

すぐに松本様を訪問した私は10ページほどの資料を松本様の前に置き、資料に沿って新製品の說明を始めたのですが、松本様はおもむろに資料を手元に引き寄せたかと思うと、私の說明には一切に耳も貸さずに、あっという間に資料の最終ページまでを眺め終わってしまったのです。そしてかなり強めの語気で、

「お前、これで何を分かれって言うんだ、出直して来い!」

と言って会議室を出ていってしまったのです。

会議室に入ってから僅か10分後、エレベータホールには「こっちは呼ばれたから来てやっているのに、なんで叱られなきゃならないんだ」と、こみ上げる不満を必死に飲み込もうとする私の姿がありました。

返り討ちの中で見つけたヒント

Choosing the key to success from hanging keys concept for aspirations, achievement and incentive出直して来いと怒鳴られた3日後、2回目の說明機会をいただいた私は、一回目の何が悪かったのかも分からないままに、とりあえず10ページあった資料を3ページの要約版に纏めてお持ちしたのですが、またも結果は「出直して来い!」と返り討ちにあってしまったのです。
この時ばかりはさすがの私も「もう嫌だ、絶対に担当を外してもらおう」と思いながら帰社したのでした。

しかし、帰社してから気が付いたことがあったのです。
松本様は「出直して来い」と言ったのであり、「二度と来るな」と言われた訳では無いということでした。
そして1回目には無かった「これを買って何か良いことがあるのかどうか分かんないんだよ!」との発言があったことを思い出したのです。

改めて資料を見直すと、会社が用意した資料は製品の特徴紹介から始まり、新機能の紹介、直感的に使えるインターフェース、他製品との親和性、そして最後に想定される利用シーンが記述されていました。

私は新たに1ページだけの資料を用意し、これを最後にしようと思いながら3回目の製品說明の機会を得ました。

たった1ページの新しい資料を見せたときの松本様の笑顔は今でも忘れられません。「やれば出来るじゃないか、これが欲しかったんだよ。」と初めてお褒めの言葉をいただいたのです。

この時私が用意した資料は、もともとあった資料を後ろから順に抜粋しただけのものでした。

苦手な客から学んだ『顧客視点』の本質

Question marks. Idea or problem concept. 3d松本様にご評価いただいた資料の内容は、それまでの資料と何ら変わりはなく、単に紹介する順を逆にしただけのものでした。なぜそんな子ども騙しの様な資料の変更で松本様が納得したのでしょうか?

製品カタログ、紹介資料の多くは顧客視点ではなく、製品を供給する側の視点で作成されています。製品を開発した方々にとって「こんなに素晴らしい機能を知って欲しい」との思いが強く反映されるのかもしれませんし、真の意味での顧客視点が何かを解っていないのかもしれません。

松本様が私に要求していたのは、お客様にとってのメリットを端的に示せということだったのです。さらに後日知った話では、松本様ご自身が自社内の上司にこの製品を説明したいと考えていたとのことで、よりシンプルな資料が必要だったそうです。

結果的に見せる順を変えただけの資料が私にとって顧客視点の本質を紐解くヒントとなったのでした。

もし私が松本様を避けていたら、顧客視点とは何かを考える機会はもっと遅い時期に迎えることとなっていたでしょう。それまでの間、自分本位の資料だけを使い続けていたのかと思うと肌寒ささえも感じるのです。

苦手な客から学び取る力 不満が無いのは黄色信号

Business concept - Planning for future events.松本様がまだ若い私を育てようという意図があったかどうかは定かではありませんが、何らかの期待と要求が私へ向けられていたことは間違いありません。そして彼は少なくとも3回は匙を投げること無く私に付き合ってくれたのです。私は面倒くさい、嫌だなぁと思いつつも、結果的にこの経験から大切なことを学び取りました。

私が松本様を苦手だと感じた理由は、嫌なことをはっきりと言われるからでした。当初は嫌味と思っていた彼の発言も冷静になって考えれば、良好なパートナー関係を築くために必要な苦言だったのです。

多くのお客様と接していると、確実に以前よりも叱るお客様は少なくなってきていると感じます。叱られない、怒られないことは必ずしも良いことではなく、表面上は不満も無さそうに接してくださっていたお客様ほど、ある日突然、競合他社の製品に乗り換えていたりすることが多くなっているのです。お客様が言い難いからと言葉にしなかった不満や要望は、確実に離反へと繋がって行くのですから、『不満が無いのは黄色信号』と肝に命じてお客様に接しなければなりません。

苦手な原因が相手にある場合も

Social management and career manager business concept as a person standing on a group of connected roads that are shaped as a human face as a symbol of public relations and managing people.もしも、あなたの周りに嫌味ばかり言う苦手なお客様が居るのなら、絶対に避けて通ろうとしてはいけません。もし目の前の苦手な方を避けたとしても、いずれまた他の苦手な方に遭遇するだけですから、なるべく早いうちに苦手な方の本音を汲み取る術を身につけるべきなのです。

松本様を克服した私は、その後も苦手なお客様ほど早く克服すべく喰らいつくように接してきました。多くの場合、苦手と思っていた方の懐に入ることが出来ましたが、残念なことにどんなに喰らいついてもうまく関係を築くことが出来ない方もいらっしゃいました。そんな時に考えなければならないのは、良い関係を築けない原因が自分にあるのか、相手にあるのか、どちらなのかということです。私はこの時もシンプルに解を出すことにしています。

  • 同時期に3人以上の苦手と感じる相手が居る場合 → 自分に何らかの問題がある。
  • 同一人物を苦手と感じている人が自分を含めて3人以上居る場合 → 苦手と感じさせる相手に問題がある

必要以上に自分を責める必要はありません。相手に問題がある時には気持ちを切り替えて他のアプローチを考えれば良いのです。

あなたの仕事は山の頂上に登ることです。どのルートを使って頂上に到達しても良いのですから、高過ぎる壁にぶつかった時は速やかに他のルートを探すだけのことです。


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