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新卒入社者が退職を考えた時に少しだけ立ち止まって読んで欲しいこと

新卒で入社してきた某有名大学院卒のある女性社員が、同社で3年目迎えること無く、他社に活躍の場を求め会社を去る決断をしました。

彼女は狭き門と言われる大手外資系企業の内定を手にしたにも関わらず、なぜ同社でキャリアを積むことを断念したのでしょうか?

同時多発する悩みの数々も、その本質はひとつだけ

rear view of a caucasian business person looking at the question marks on white board.私が彼女から予想外の相談を受けることになったのは、彼女が入社3年目に入る直前の3月のことでした。

たまたま彼女の上司が自己都合で退職したことにより、急遽、私が彼女の所属部門を率いることになったのです。私は彼女の存在こそ知っていましたが、挨拶を交わす程度で会話らしい会話はしたことがありませんでした。当時、私が持つ彼女の印象は、明るく前向き、あちこちの飲み会にも参加している可愛がられ上手な新人社員、というものでした。

私が彼女の新しい上司となって2週間が経った頃、彼女から1時間ほどのミーティングをお願いしたいとのメールが届き、私は快諾しました。

ミーティング・ルームに入ると、そこには今まで見たことも無いほど沈鬱な表情で座る彼女が待っていました。ただならぬ雰囲気を感じつつ私は彼女の話を聞き始めたのです。

開口一番に彼女の口をついたのは、「言われている業務指示の意味が解らない」というものでした。

その後も続く彼女の悩みを”彼女の言葉のまま”列記すると以下のようなものでした。

  • 業務指示の意味が解らない
  • 自分の仕事がどのように会社の役に立っているのか解らない
  • 直属の上司、メンターを信用できない
  • 他社に入社した大学時代の友人に遅れを取っていて焦っている

次々と出てくる悩みを順に聞いていると、それはまるで多種多様な悩みのように聞こえていましたが、一通り話を聞いた後の私の感想は、「彼女が配属された部門には新人を育成するだけの組織力が備わっていなかったのだ」というものでした。

無責任な助言とやる気の空回り

desperate man crying under rain元来、向上心の強い彼女は、当初は指示を誤解したくない、期待に応えたいとの純粋な動機から、親しくなった他部門の先輩に自分の理解を確認する意味で相談していたものが、色んな意見を聞くうちにやがて何を、誰を信じて良いのか判らなくなっていたのです。

同じ会社の中とは言え、部門が異なれば利害が一致しないことも多々あるのが当然です。それを理解すること無く、彼女に対する育成責任を持たない諸先輩からただただ無責任なコメントばかりを集めてしまえば、業務の方向性にズレが生じるのは想像に易い話です。同時に自部門の上司、先輩が周囲からどう評価されているのかをも耳にする様になってしまった彼女が、業務指示に逐一疑問を抱くようになってしまったのも必然のことだったのでしょう。

そして私が何よりも問題視したのは、彼女が悩みの多くを自分の力不足、努力不足と認識し、必要以上に自分を責めていたことでした。

私は彼女にいくつかの助言をしましたが、時既に遅く、彼女の自尊心を建て直すことが出来ないまま、彼女を送り出すこととなってしまったのです。

採用した企業の育成責任

Businessman looking up at the high building, low angle数年前から第二新卒という言葉が一般化し、最近では新卒者の約30%が3年以内に離職、再就職するとも言われています。その多くはキャリアップ、または軌道修正のための転職でしょうから、決して否定されるものではありません。ただ、もし配属された部門の組織力不足が原因だったとすれば、それは新入社員、企業の双方にとって大変不幸なことだと言わざるを得ません。

もし、前述の彼女の配属先の上司が適切に数年先までの育成プランを說明し、それが彼女にとって納得のいくものであれば、彼女は焦ることも不安を抱くことも無かったでしょう。

もし、彼女のメンターがひとつひとつの指示の意味を、会社への貢献度という視点で紐解くことが出来ていたなら、彼女はより的確なパフォーマンスを発揮していたかもしれないのです。

残念なことに彼女の持つ高いポテンシャルは、業績という実を結ぶこと無く他社へと移ってしまったのです。

企業に就職するということは、企業と個人が雇用契約を結ぶということです。契約事には双方に一定の責任と権利が生じることとなりますが、多くの若者が求める権利を行使することなく、退職という選択をしているように思います。

採用した企業に生じる責任とは、その社員を適切に育成するということです。育成過程において納得出来ないことがあれば、社員はより良い說明を求めるだけの権利があり、何ひとつ自分を責める必要は無いのです。逆に採用する企業側は配属先の環境も含めて、十分な組織力のある配属先であるかを見極めなければなりません。まして採用する社員が社会人一年生の新卒者であれば、より一層の配慮があって当然でしょう。

時には駆け込む勇気も必要

Person under heap of crumpled papers with hand holding a help sign最後に少々手前味噌になってしまいますが、なぜ彼女が私を相談先に選んだのかを書いておかなければなりません。

彼女は無作為と言って良いほどに、他部門の諸先輩に助言を求めていたのですが多くの先輩社員が自分の手に負えないテーマを持ち込まれた際に、それを私に相談してみると良いと助言したそうです。しかし、彼女は業務上の接点も少なく、飲み会で同席することもない私へのコンタクトをためらい、相談する時期を逸していました。

どんな企業にも、駆け込み寺の様な先輩が1人くらい居るのではないでしょうか。もしも複数の先輩が指し示す相談先があったのなら、ためらう事無く、時間を開けずに駆け込むことを若者には強く勧めたい。直属の上司に「あなたの說明が悪い」と言う勇気は無くても、他の有識者に駆け込むことなら出来るのではないでしょうか。むしろ悩んだ時に駆け込むことこそが若者の義務なのかもしれません。

今でも私は新卒者を見ると時々彼女を思い出し、あと半年早く彼女の悩みを聞けていたなら、と思うことがあります。

もしも半年早く、企業における彼女の価値を語ってあげることが出来ていたのなら、今頃彼女は優秀なビジネス・ウーマンとして我が社の業績に大きく貢献していたことでしょう。


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